FXでのPipsとは何か?
FXのトレードを始めると、サイトや取引画面など様々なところで「Pips(ピップス)」という単語を目にするはずです。とはいえ、「どういう意味なのかな?」、「いつ使うの?」、「どんなメリットがあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
確かに、Pipsという単語は普段の生活で目にすることがないため、ピンとこないのも当然だと言えます。しかし、Pipsは値幅や損益などを確認する際に使うことから、FXでトレードをする上で必須の知識です。
Pipsとは何を意味しているのか、トレードで具体的にどう活用されるのかを理解し、FXのトレードをよりスムーズに効率よくできるようにしましょう。
Pipsは「Percentage in Point」の略称
「Pip(ピップ)」とは、Point in Percentageの略で、FXトレーダーが2つの通貨間の価値の変化の最小値を定義するために使用する単位です。一般的なFXのクォートでは、これは小数点以下第4位の1桁の動きに相当します。
FXでは様々な通貨がトレードされることから、「ドルが1.ドル変動」、「ポンドが1ポンド変動」などと表現した場合、通貨単位が各通貨で違うため分かりづらくなります。
そこで、通貨の共通単位として使用されているのがPipであり、その複数形がPipsです。
例えば、EUR/USDのレートが1.1402から1.1403に動いた場合、これは1Pipまたは1「ポイント」の動きとなります。
しかし、すべてのFXのクォートがこのように表示されるわけではなく、日本円がその例外です。日本円については、本記事で詳しく後述します。
Pipsの用途
前述した通り、Pipsは値幅を表す時によく使われます。1Pipがいくらになるかは、通貨ペアによって異なります。
例えば、USD/JPYやEUR/JPY、GBP/JPYなどのクロス円の場合は、1Pip=0.01円(1銭)となり、100Pips=1円です。USD/JPYのレートが100.00円から100.01円に上昇すれば、1 Pip(1銭)上昇したということになります。
一方、EUR/USDやGBP/USDなどの場合は、1 Pip=0.0001ドル(0.01セント)です。EUR/USDのレートが1.0000ドルから1.0001ドルに上昇すれば、1 Pip上昇したということになります。
また、買値と売値の値幅、つまりスプレッドを表す際の単位としてもPipsは使われることが多いです。例えば、USD/JPYのスプレッドが1Pipと表示されている場合、1ドルにつき1Pip(1銭)の手数料が発生することを意味しています。
特に、トレード回数が多くなる短期トレーダーは、スプレッドの違いが収益に大きく影響しやすいため、スプレッドのPipsがどの程度なのかを把握しておくことが必須です。
Pipの価値を計算するには?
Pipsがどのような時に使われるかが分かったら、次はPipの価値の計算方法を見ていきましょう。計算というと難しいイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、実は非常にシンプルに計算することができます。Pipの価値の具体的な計算方法を理解し、損益をパッと計算できるようにしましょう。
Pipの価値の計算方法
Pipの価値は、1Pip(0.0001)に特定のロット/取引単位のサイズを乗じて算出されます。通常の場合、基準通貨は10,000または1,000単位(通貨)であることが多いです。例えば、EUR/USDを見ると、標準単位における1Pipの動きは1ドル(0.0001×10 000)に相当します。
1Pipの価値を計算できるようになると、利益確定の目標とストップロスのレベルについて金銭的な価値を把握できるようになります。単にPipの動きを分析するのではなく、トレーダーは、マーケットの動きに応じて取引口座(エクイティ)の価値がどのように変動するかを判断することができます。
1Pipの価値は、通貨ペアによって異なります。これは、1Pipの価値が常にクォート/変動通貨で表示され、通貨ペアによってこれが異なるためです。EUR/USDをトレードする場合、1Pipの価値は米ドルで表示され、GBP/JPYをトレードする場合、これは JPYで表示されます。
1Pipの価値を計算する - EUR/USDのPipsの例
各通貨にはそれぞれ相対的な価値があるため、特定の通貨ペアごとに1Pipの価値を計算する必要があります。
FXでは取引単位が決まっており、国内FX業者では10,000または1,000通貨であることが多いです。また、海外業者では一般的に、下の表のような仕様でスタンダードとミニの取引単位が用意されています。
取引単位の種類 | 取引単位のサイズ(基準通貨の単位数) |
---|---|
スダンダードロット | 100 000 |
ミニロット | 10 000 |
EUR/USDの10,000通貨の1Pipの価値は以下のように計算されます。
Pipの価値=取引単位のサイズ×1Pip
Pipの価値=10,000×0.0001
Pipの価値=1ドル
1Pip動くごとに1ドルの利益が得られたり1ドルの損失が発生したりします。同じ理屈で、1,000通貨の1Pipの動きは0.1ドルの利益または損失に相当します(1,000×0.0001)。
Pipとその計算方法についてさらに理解を深めるには、自分で計算の練習をしてみるといいでしょう。
Pipの価値の換算
あなたの口座が 英国ポンド(GBP)を基準としているなら、1ドル(EUR/USDの10,000通貨の1Pipの値)をポンドに変換する必要があります。そのためには、1ドルを現在の GBP/USDの為替レートで割ります。この記事を書いている時点での為替レートは1.2863です。ポンドは 米ドルの価値を上回っているため、割る必要があります。1を1.2863で割ると0.7774ポンド。答えは1を下回ります。つまり、ポンド建ての口座で、EUR/USDの1万ロットで1Pipの利益または損失を出した場合、0.7774ポンドの利益または損失が出ることがわかりました。
例外 - USD/JPYのPipsとは
主要通貨を日本円でトレードする場合、1Pipは小数点以下第4位ではなく、小数点以下第2位です。これは、日本円の価値が主要通貨よりもかなり低いからです。
下の 米ドル/日本円のクォートを見ると、買値(買い)は1米ドル=107.99円となっています。
日本円を10,000または1,000通貨で売買する場合、1Pipの動き(1Pipの価値)はそれぞれ100円と10円になります。
Pipsを使った投資効率の算出
Pipsを理解することで、値幅やその価値を把握することができますが、他に投資効率の算出ができるというメリットもあります。投資効率を算出することができれば、自分のトレードの成績が格段に判断しやすくなります。
例えば、以下のようなトレードをおこなったとしましょう。
➀USD/JPYが1ドル=100.00円の時に10,000通貨買い、101.00円の時に売った。
②USD/JPYが1ドル=100.00円の時に50,000通貨買い、100.20円の時に売った。
この場合、それぞれの利益は
➀100銭(1円)×10,000通貨=10,000円
②20銭(0.2円)×50,000通貨=10,000円
となり、結果的には両方10,000円の利益です。
ただし、利益の値幅(買値と売値の差)は以下のように異なります。
➀100銭(100 Pips)
②20銭(20 Pips)
要するに、10,000円という利益は同じであるものの、獲得した値幅は➀の方が5倍も大きいのです。もし①のトレードで②と同じ50,000通貨を買っていれば、利益も50,000円と5倍になっていたということになります。
そのため、①の方が②より投資効率の良いトレードであると判断することができるのです。獲得した値幅は「獲得Pips」と呼ばれ、獲得Pipsが大きければ大きいほど、投資効率が良く、トレードの成績も好調であると言えます。
Pipsを利用するメリット
Pipsを利用することには、異なる通貨ペアでも値幅を直感的に比較しやすく、投資効率も分析しやすくなるというメリットがあります。前述した通り、FXでは単位が異なる様々な国の通貨をトレードするため、共通の単位が無ければ複数の通貨ペアの値幅の比較は複雑になってしまいます。
したがって、もし通貨ごとの単位で値幅を表すと、その通貨に慣れていないトレーダーは変動幅をイメージしにくくなるでしょう。トレードの利益額ではなく、獲得Pipsの数値でトレードの成績を効率面から見ることもしづらくなってしまいます。
また、人間は大きな金額を見ると、冷静な判断ができなくなる傾向があります。つまり、保有するポジションが大きければ大きいほど、どんどん冷静な判断から遠のいていってしまいやすいということです。しかし、Pipsで値幅を計算することができれば、〇〇円といったリアルな金額から距離を置き、〇〇Pipsという基準からの冷静な判断がしやすくなります。
Pipsの注意点
Pipsを活用することには様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。というのも、初心者の場合はPipsしか見ていないと、許容できる損失額を超えてしまうことがあるのです。
例えばドル円を新規注文した際に、利益確定の値幅と損切りの値幅を以下のように設定したとします。
- 利益確定の値幅:200銭(200Pips)
- 損切りの値幅:100銭(100Pips)
このように一定のルールにしたがってトレードすることは、決して悪いことではありませんが、初心者の方には落とし穴になる危険性があります。というのも、取引量によって実際の損益は大きく変わるからです。
上記のルール通りのトレードを10,000通貨と1,000通貨でそれぞれおこなった場合、損切りになった際の損失額は以下のようになります。
- 10,000通貨:100銭(1円)×10,000通貨=マイナス10,000円
- 1,000通貨:100銭(1円)×1,000通貨=マイナス1,000円
要するに、同じ100銭で損切りをおこなったにも関わらず、取引量が10倍であるため、損失額も10倍になるということです。したがって、初心者のうちはPipsだけ見るのではなく、「損失額は許容範囲内に収まっているかな」ということも、事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
Pipsは損益を計算する際など、FXにおいて使われる機会の多いものですが、慣れるまでは少々難しく感じるかもしれません。しかし、実際に動いているレートを見て、スプレッドを確認したりデモ口座でトレードしたりしながら計算していると、ノーリスクで早く感覚をつかめるようになります。
ある程度感覚をつかんできたら、ライブ(本番)口座で小さなポジションを保有してみるのもおすすめです。Pipsについての理解を深め、より効率的でスムーズなトレードを目指しましょう。
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